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Rinnai Hybrid Water Heater「ECO ONE」

「ネットゼロ」に向けた
給湯の切り札

カーボンニュートラル建築の第一人者と考える
「ECO ONE」の魅力

  • 早稲田大学
    田辺 新一 教授
    理工学術院創造理工学部
    建築学科

  • リンナイ株式会社
    経営企画本部
    祖父江 務
    総合戦略部長

  • リンナイ株式会社
    開発本部
    林 泰平
    第三商品開発部長

  • 日経BP総合研究所
    社会インフララボ
    小原 隆
    上席研究員

※所属・役職等はすべて
日経ビジネス掲載(2023年11月)当時のものです

2050年までにCO2排出ゼロを目指す「ネットゼロ」社会の実現に向けて、省エネ・低炭素排出が実現できる高効率給湯器の重要性が注目されている。お風呂で体を温める習慣などから、海外と比較して「給湯」分野のエネルギー消費比率が高い日本。そこで「心地よい暮らし」を維持しながらネットゼロを目指すには何をすべきか。日本建築学会前会長で早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科 田辺新一・教授と、リンナイの祖父江務・経営企画本部 総合戦略部長、林泰平・開発本部 第三商品開発部長の3名に話を聞いた。
(聞き手=日経BP総合研究所 小原隆 上席研究員)

2050年までにCO2排出ゼロを実現するにあたり、
なぜ「給湯」が注目されるようになっているのでしょうか。
その背景を教えてください。

早稲田大学 理工学術院創造理工学部建築学科 田辺 新一 教授

田辺最近は「ネットゼロ」と言われるようになったカーボンニュートラルの取り組み。住宅と建築を合わせると日本で求められる削減量全体の3分の1ぐらいのCO2削減が求められています。一方、EV化など自動車電動化や水素化などで求められる運輸部門のCO2の削減量は18.6%ほどですから、実はネットゼロ化における住まいや建築の役割は実は非常に大きいのです。

その中でも特に日本で注目されはじめたのが「給湯」の分野です。給湯における一次エネルギー消費量は、欧州諸国と比較するとかなり多い。これは日本のお風呂文化が影響しているのだと思います。例えば私が1980年代に2年住んでいたデンマークなどでは、オイルショック後にバスタブを使わずシャワーだけで過ごそうという運動が起こるなど、お湯を使わない文化が作り上げられてきました。

とはいえ、やはりシャワーだけでは疲れが取れませんよね。日本人の健康や衛生環境はお風呂が支えている部分もあり、日本ならではの「心地よい暮らし」を守りながらネットゼロを進めることが大切なのです。

日本ならではの省エネのやり方、方法というのを
考えていかなくてはいけないということですよね。

日経BP総合研究所 社会インフララボ 小原 隆 上席研究員(聞き手)

田辺はい。実は欧米では今、かなりの勢いで給湯のヒートポンプ化、つまりガスから電気へのシフトが進んでいます。ヒートポンプとは空気の熱を利用して電気でお湯を温めるもので、45℃前後までのお湯を作るなら非常に効率がいい給湯システムです。欧州ではいま、天然ガスの価格が日本の2倍から3倍に跳ね上がっています。ウクライナ戦争の影響もあり、天然ガスに対して厳しい見方も広がっているという背景もあるでしょう。

米国でも、カリフォルニア州バークレーを皮切りに、低層の住宅や建築物にガス管を繋ぐことを禁止する地域も増えてきました。ネットゼロ化を強制的に進めるために電化して再エネを使うという発想ですね。

空気の熱を利用して電気でお湯を温めるヒートポンプ

ハイブリッド給湯システムは
さまざまな社会課題に対応

祖父江とはいえ、日本にはこの国ならではの特殊な事情があります。お風呂の追い焚きをはじめ、海外の人々より高い温度のお湯を必要とするケースがかなりあります。欧米のようにシャワーを使うだけならお湯は40℃程度で十分で、その際はヒートポンプだけで対応できますが、日本では熱いお湯を瞬間的に作り出せるガス給湯の利便性も求められるのです。

田辺その解決策として、ヒートポンプもガスもというハイブリッド給湯器は、非常に理にかなっていますよね。

また、エネルギー自給率が11.7%と低い日本は、これまでお湯を作るのに使われてきた天然ガスを「長期契約」で輸入しており、これをうまく使っていくことは日本のエネルギー政策上重要です。

もちろん2050年に目を向けると、給湯器で使われている天然ガスは、再エネで作られた水素、あるいはe-メタンと呼ばれる再エネ水素から作られたメタンガスなどに置き換わっていくでしょう。それらの利用も視野に入れつつ、またその過程に起こる「天然ガスを使わなければいけない状況」に対応できる。加えて、お風呂にじっくり入れて快適性も実現できるという、さまざまな社会の要求や課題を同時に解決できるという意味で、ECO ONEは非常に優れた給湯システムだと思います。

ハイブリッド給湯器
「ECO ONE」とは

電気の力で空気中の熱を集めてお湯を温める「ヒートポンプ」と、高効率なガス給湯器「エコジョーズ」のメリットを組み合わせた給湯器。トップクラスの省エネ性能と低CO2排出量を誇り、住宅の「ネットゼロ」を担う機器としてエネルギー業界・建築業界から注目を集めている。

祖父江田辺先生がおっしゃった将来的なエネルギーの変遷については、リンナイとして2050年に向けた方針として発表いたしました。当社は世界各国のエネルギー方針やインフラ普及を注視し、それぞれに対応できるように取り組んでいく方針です。

リンナイのカーボンニュートラル
実現に向けた方針 〈RIM2050〉

再生可能エネルギーは将来「取り合い」に

今後日本は、再エネの比率をより高める方向に進んでいます。
太陽光などの再エネを利用するという点で、
ECO ONEに求められる役割とはどのようなものでしょうか?

田辺将来的に太陽光をはじめとする再生可能エネルギーを中心にエネルギー消費する場合、デマンドレスポンス(DR)という考え方が重要になります。再生可能エネルギーは、例えば太陽光なら日中の晴れの日、風力発電なら風が吹いている日、というように発電できる時間が限られて安定供給がしにくい点があります。一方でこれまで天然ガスや原油で賄っていたエネルギーの電化が進むと、電気の消費量は一層膨大になります。

そうしたなか、例えばEVが普及するとどうなるのでしょうか。英国で実際に起こっていることなのですが、地域でEVの充電時間が夕方に集中してしまい、その時間だけ電気が足りなくなるという事態になるのです。会社から家に帰ってきて、皆が一斉に充電のために自動車をコンセントに繋ぐ。一方で夕方の時間帯だと太陽光発電はあまり機能していない。するとこの時間は電力の消費が供給を上回ってしまい、電力の需給バランスが崩れてしまうという問題が浮上しています。つまり、電力を「取り合う」ことになるのです。

そこで日本では経済産業省主導で「DR Ready」という仕組みをさまざまな機器に導入しようとしています。電力の不足が予想された場合、調整力として火力発電所を稼働させたり、蓄電池の電気を放出するだけではなく、家庭などにある機器にシグナルを送り、稼働を止めたり出力を下げたり、稼働時間をずらしたりということを可能にする機能です。

こうしたDR Readyの機能は、まずはEVの充電やエアコンなどの遠隔制御からスタートすると考えられますが、給湯器についても間違いなく実装されると思います。

給湯も含めて設備機器というのは社会インフラの一部になっていて、
その稼働を自分の好き勝手ではできなくなるということですね。

リンナイ株式会社 開発本部 林 泰平 第三商品開発部長

ECO ONEは、お客さまの生活スタイルに合わせて効率的に自動でお湯を沸かします。それ以外にも自宅の太陽光発電に合わせて電力の自家消費を優先してお湯を沸かすモード、またスマートフォンと連携して手動で動かせるモードなど、お客さまの行動変容や社会の変化に対応した稼働ができる仕組みになっています。

また、ガスで給湯できる利点がここでも生きると思います。電力需給の問題でヒートポンプを止めることになっても、お客さまにはガス給湯を稼働して必要なお湯の量をしっかり提供できる。お客様の快適性を全く損なわず、デマンドレスポンスにも対応できるのです。

ECO ONE X5

田辺将来的に電化しかないという世の中は来ないと思います。あらゆる産業を含めて「高温でないと駄目」という場面は多く、水素や先ほど説明したe-メタンに置き換わるとしても、ガスの燃料が必要とされる場面は必ずあります。

既存住宅のリプレースにも対応

建築のなかでも住宅設備を専門とする田辺先生ですが、
その視点からハイブリッド給湯器のメリットというのはありますか?

田辺今、ECO ONEのようなハイブリッド給湯器やエコキュートのようなヒートポンプ型給湯器は新築住宅を中心に普及していますが、実際の給湯器のボリュームゾーンは「既築」の住宅です。給湯のネットゼロ化を進めるためには、このボリュームゾーンである既築住宅にアプローチする必要があります。

その時に大きな課題となっているのが、実は給湯器のサイズなのです。ただでさえ狭い日本の居住空間を邪魔しないよう小型で壁付けができるように進化しており、日本のガス給湯器は良くできています。余談にはなりますが、その性能の高さから今アジア諸国でも日本のガス給湯器が急速に普及しています。

ただ、それを国内で高効率給湯器に置き換えようとすると、スペースや設置性の問題が出てきます。例えば電気だけでお湯を沸き上げるヒートポンプ式のエコキュートを導入しようとした場合、4人家族で370L〜460Lのタンクを必要とします。そのボリュームの設備は、当然既存のマンションの玄関脇の給湯器設置スペースには置けません。仮にベランダに置けたとしても、では何百kgという設備を住戸分全てに設置するのは厳しい。一戸建て住宅でも、都心の狭小住宅などの場合には、サイズの面で設置に相当の困難が伴うのが現状です。その点でタンクが小さいECO ONEは、既築住宅の給湯器のリプレースに向いている商品だと感じます。

祖父江サイズや重量は、安全性にも影響を与える場合があります。例えば地震の多い日本では、高効率給湯器の貯湯タンクが倒れることが問題になりました。倒れてしまえば使用できなくなり、なにより危険です。そこで重量が100kgを超えるような給湯器は基礎工事を必ず行うなど「倒れない」ためのガイドラインができました。そして、この基礎工事を行うことはコスト面で設置の課題となっていました。

ガス給湯器市場ボリューム

ガス給湯器約274万台(2020年度)

給湯のネットゼロ化には、既築住宅にあるガス給湯器の置き換えが欠かせない
リンナイ株式会社 経営企画本部 祖父江 務 総合戦略部長

一方弊社は、タンクそのものをもっと小さくできないか試行錯誤を続け、基礎工事が不要な70Lのタンクのモデル「X5」を開発。この9月には家庭用の100V電源のコンセントに対応した「PLUG-IN MODEL」を発売しました。設置スペースに合わせてさまざまなレイアウトができるようになっており、設置奥行きが50センチの隙間があれば置ける工夫もされています。

タンクが小さくてもハイエンドモデルと比較してもエネルギー効率が大きく変わらないよう性能の向上にも努めています。狭小住宅でもネットゼロに貢献できる給湯器として、他の高効率給湯器にはない高いアドバンテージを持っているのがECO ONEです。なお、ECO ONEでは設置が難しい既築の集合住宅へはエコジョーズの普及を真っ先に進めます。

ガス給湯器からの買い替えに適した、小型で設置性の高い「ECO ONE X5 PLUG-IN MODEL」。70Lという小容量のタンクながら、高い省エネ性能を実現。既設の屋外コンセントがそのまま使用でき、専用電源配線や基礎工事が不要。

祖父江このハイブリッド給湯器を既築住宅に普及させるために補助金を交付する国の支援策「給湯省エネ事業」も始まり、国策として高効率給湯器を普及させようという機運がどんどん高まっています。

田辺ガス機器メーカーながら、電気でもお湯を沸き上げられるハイブリッド給湯器を作ろうと考えたのは、本当に大英断だと思います。未来を見据えて10年も前から先行してECO ONEの販売を続け、その思想がようやく今の時代に追いついてきたのではないでしょうか? 今やECO ONEは「ネットゼロ」を実現するための極めて重要な戦略商品、という印象を受けました。